2026-01-01から1年間の記事一覧

【MB2026-017】天下の値段(門井慶喜)

個人的に好きな作家・門井慶喜。いつもは偉人の伝記が多いが、今回は米を経済の基盤とした江戸社会を背景に、大坂・堂島の米市場を舞台として展開する物語である。年貢米を扶持として受け取る武士と、米を通貨化し先物取引(帳合米)で活況を呈する商人たち…

【MB2026-016】「戦後」の終焉(保阪正康・白井聡)

年が明けてもまだまだ終わらない戦後80年のシリーズ。今回は、保阪正康・白井聡の『「戦後」の終焉』。日本が太平洋戦争の総括と責任追及を自ら行わなかった結果、戦後80年を経ても対米従属から抜け出せない構造を批判的に分析した対談集である。昭和天皇の…

【MB2026-015】ぼくのスパイス宇宙(矢萩多聞)

宇宙に関する本かと読み始めたらインドの香りが満載。そんな『ぼくのスパイス宇宙』。著者がスパイスとの出会いから日常の料理、旅や記憶へと連想を広げていくエッセイ集である。香りや辛味を科学や文化の視点で語りつつ、失敗談や工夫を交え、台所を小さな…

【MB2026-014】苦痛の心理学(ポール・ブルーム)

人はなぜホラー映画や激辛料理、過酷な運動など、自ら苦しみを求めるのか。本書はその疑問に対し、「意味ある痛み」という観点から科学的に考察する。苦痛は単なる不快ではなく、達成感や充足感、人生の意味と深く結びついていると説き、心理学や進化論を通…

【MB2026-013】心に折れない刀を持て(森岡毅)

USJ再建を成し遂げた著者が、頓挫した沖縄テーマパーク構想を「ジャングリア沖縄」として実現するまでを描く。資金調達や交渉、挫折と成長の舞台裏を、覚悟と熱量あふれる言葉で綴る。単なる開業記ではなく、ビジネスを通じて社会に何を届けるかという問いが…

【MB2026-012】苦痛の心理学(ポール・ブルーム)

人はなぜホラー映画や激辛料理、過酷な運動など、自ら苦しみを求めるのか。本書はその疑問に対し、「意味ある痛み」という観点から科学的に考察する。苦痛は単なる不快ではなく、達成感や充足感、人生の意味と深く結びついていると説き、心理学や進化論を通…

【MB2026-011】勝負師 孫正義の冒険(下) (ライオネル・バーバー)

上巻に続いて読んだ『勝負師 孫正義の冒険』。下巻では、ソフトバンクのモバイル事業の発展からビジョン・ファンドを軸とする巨額投資戦略への転換を描く。孫正義氏の大胆かつ即断的な意思決定や交渉術が、事業のダイナミズムとして浮かび上がる。携帯事業か…

【MB2026-010】天皇機関説タイフーン(平山周吉)

今回もまた戦前の話である。『天皇機関説タイフーン』は、1935年の天皇機関説事件を現在の問題と安易に結びつけることなく、当時の状況を資料に基づき丁寧に描く。中心となるのは美濃部達吉と宮沢俊義という対照的な憲法学者の生き方であり、弾圧に抗した者…

【MB2026-009】フラット登山(佐々木俊尚)

毎朝聴いているラジオ番組に時々ゲストコメンテーターで登場する佐々木俊尚。そんなコメンテーターの話題の著書で、以前から読みたかった『フラット登山』。平坦で広大な大地を歩くように、頂上や難易度に執着せず、歩く喜びそのものを味わう登山「フラット…

【MB2026-008】勝負師 孫正義の冒険(上) (ライオネル・バーバー)

本書は記者による孫正義の伝記で、上巻はアリババ提携までを描く。初の米国人著者による作品で、忖度ない第三者視点と、日本人とは異なる着眼点が新鮮。孫の行動原理を、衝動的集中と混乱の後始末を他者に委ねる姿勢として鋭く描写し、破壊的イノベーション…

【MB2026-007】戦闘国家(小泉悠・小谷賢)

小泉悠の対談集。前回は黒井文太郎で、今回は小谷賢。ロシアやイスラエルの肝である「インテリジェンス」を詳細に解説するとともに、戦争を続ける国家の論理と心理を冷静に解き明かした一冊。教養書やニュースでは捉えにくい国家の「なぜ」に迫り、現代国際…

【MB2026-006】最高の体調(鈴木祐)

現代人の不調の原因を「文明の進化と人間の本能のミスマッチ」に求め、進化医学の視点から心身を整える方法を示してくれる。人は本来、空腹・運動・不確実性・社会的つながりのある環境で進化してきたが、快適で刺激過多な現代生活が慢性炎症や不安、抑うつ…

【MB2026-005】思考実験大全(岡本裕一朗)

『思考実験大全』。本書は、「トロッコ問題」や「囚人のジレンマ」「シュレディンガーの猫」など、科学者や哲学者が生み出した思考実験を100問集めた一冊である。各思考実験を会話劇などのエピソードとして再構成し、背景や要点を平易に解説している。分量は…

【MB2026-004】昭和期の陸軍(筒井清忠)

なぜかここのところ戦前の本を読むことが多かったが、それもそのはず、昨年は終戦80年・昭和100年で回顧が盛んであった上に、通俗的解釈の著書が多かった。昭和史研究の第一人者・筒井清忠は、昭和期陸軍に関する論考を集成し、甘粕大尉事件(大杉栄らを殺害…

【MB2026-003】教養としてのコーヒー(井崎英典)

コーヒーは大好きだが、実はよく理解しないで飲んでいる自分がいる。コーヒーについて学ばなくては、と読んだ『教養としてのコーヒー』。世界中で石油に次ぐ取引総額を誇るコーヒーは、世界各地でなぜ愛され続けるのか。バリスタ世界王者の著者が、歴史や栽…

【MB2026-002】エレガンス(石川智健)

今年最初の小説は『エレガンス』。空襲が日増しに激しくなる1945年の東京が舞台。ライカで写真を撮ることを許された警視庁の主人公。内務省防犯課のベテランとともにB29の飛来する東京で洋装女性連続不審死の謎に挑む。戦時下でも自らの意志で美しい衣装を選…

【MB2026-001】伊藤博文の流儀(福屋利信)

自分が生まれ育った頃の千円札は伊藤博文。今年最初の読書は、そんな初代首相・伊藤博文の再評価を試みた評伝『伊藤博文の流儀』。郷土の英雄への低評価に疑問を持った著者。伊藤が憲法制定で天皇権力を抑制し、当初は日韓併合に反対するなど、君主制と民主…