【MB2026-188】銀嶺のかなた(二) (安部龍太郎)

 『銀嶺のかなた』第二巻。賤ヶ岳の戦い後、豊臣秀吉の信頼を得た前田利家が北陸で勢力を固め、やがて利長へ家督を譲るまでを描く。利家と佐々成政の対決、秀吉との駆け引き、そして利長が豊臣と徳川の間で下す難しい決断が読みどころである。歴史の定説を大胆に読み替えながら、単なる戦国武将の物語ではなく、「新しい国」をどう築くのかという視点で描いているのが面白い。特に、豪胆な利家と冷静な利長という対照的な父子の姿に惹かれた。第二巻では加賀百万石の礎が築かれていく過程を興味深く読むことができた。

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【MB2026-187】本作り500年の歴史(アダム・スミス)

 本にまつわる長い歴史に没入した。グーテンベルクの活版印刷術からこの現代まで、約500年にわたる「本の歴史」を、18人の個性的な人生を通して描く一冊。本そのものに焦点を当て、印刷や製本、紙だけでなく、既刊本を切り貼りして新たな聖書を作った姉妹や、少部数出版にこだわった作り手など、「これも本なのか」と驚くような本まで登場する。ヴァージニア・ウルフらの私家版から現代のZINEまで、本を生み出す情熱と創意工夫に満ちた物語が面白い。普段何気なく多く手にする本の見方が変わる一冊であった。

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【MB2026-186】ジャック・アタリ 豊かな人生を送るための金言集(ジャック・アタリ)

 『ジャック・アタリ 豊かな人生を送るための金言集」。学ぶことは知識を増やすだけではなく、世界の見方や生き方そのものを豊かにするのだと切に感じた。夕日や人の笑顔に心を動かす「感嘆」、年齢に関係なく学び続ける姿勢、異なる分野を結びつける好奇心、手書きや「脱力」の大切さなど、どれも新鮮な学ぶであった。特に、視点を変えることで新しさが見えてくるという考えには強く惹かれた。日常に埋没せず、違う価値観を持つ人にも耳を傾け、常に新しい発見を楽しむ。そんな姿勢こそ、人生を豊かにするのだと思う。

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【MB2026-185】「注文の多い料理店」はなぜ曖昧か(西山佑司)

 宮沢賢治の『注文の多い料理店』を解説した本かと思いきや、それだけではなかった。児童文学を題材に、普段何気なく使う言葉の仕組みと奥深さを解き明かしていく。「白雪姫」のように言葉は現実にないものさえ指し示し、独自の世界をつくり出す。そして『注文の多い料理店』の7通りにも及ぶ解釈。曖昧さは欠点ではなく、豊かさなのだと気づかされる。平易な文章ながら専門的な議論も多く、決して読みやすいだけの本ではない。しかし、言葉を通して「人間とは何か」を考えさせる、人文学の面白さを実感できる一冊だ。

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【MB2026-184】雪の如く山の如く(張天翼)

 張天翼の『雪の如く山の如く』。読み終えてじわじわと余韻が残る短編集だった。なかでも「スイマー」と「雪山」が特に印象に残った。「雪山」は繊細な情景描写と心理描写が素晴らしく、ページをめくりながら、まるで一本の映画を観ているような感覚になった。また、各篇の主人公が皆「リーリー」だと解説を読んで初めて気づいた。漢字では名前を見ても、音として読んでいなかった自分に対し懺悔の念に駆られた。女性たちの抱える傷や生きづらさも心に残ったが、濱田麻矢による美しく繊細な翻訳に惹かれた一冊だった。

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【MB2026-183】ミニシアターをたずねて(信濃八太郎)

 大きなシネコンを出た瞬間、映画の余韻が現実の喧騒にかき消されるのが少し寂しい。全国20のミニシアターを訪ね、館主や関係者の話を聞き、味わい深いイラストとともに紹介する紀行エッセイ。長い歴史を刻む劇場もあれば、地域の磁場となっている映画館もある。ミニシアターは新しい才能を育む「ゆりかご」でもある。個人的に行ったことがあるのは山形市の「フォーラム」と鵠沼海岸の「シネコヤ」だけ。映画をシネコンで鑑賞するのではなく、全国に点在する魅力的なミニシアターそのものを味わう旅に出たくなった。

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【MB2026-182】地域芸術祭とは何か(山本浩貴)

 2000年代以降、各地に広がった地域芸術祭。その歴史や論争を整理し、課題と可能性を問い直す本書は単なる「芸術祭論」にとどまらない。震災、地域社会、ケア、都市と地方の関係など、多様な問題を丁寧に結びながら、対立する意見の一方を否定も礼賛もせず、「当事者性のグラデーション」という視点を提示する。本書が示すのは、地域を「変える」ことだけではなく、時に「終わり」に寄り添い、その場に「立ち続ける」ことの価値。地域芸術祭を考えるための小さくても重い「礎石」を手渡されたような読後感が残る。

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