【MB2026-031】マンションポエム東京圏(大山顕)

 東京を路線図として把握する視点や、タワマンを「垂直に伸びた郊外」「各階が各駅でエレベータが鉄道」と捉える見立てが印象的で、マンション広告の詩的な言葉から時代背景や都市像を読み解く発想が面白い。本書は『マンションポエム』を揶揄するだけでなく、都市論・建築論として深みがあり、読者の出身地や収入といった属性によって受け止め方が変わる点も興味深い。どこまでが東京か?という議論や、千葉・埼玉・神奈川(横浜)をめぐる地域意識もユーモラスに描かれ、東京圏を多角的な視点で楽しめる内容である。

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【MB2026-030】ブラック・スノウ(ジェームズ・M・スコット)

 ルメイの大博打。今回の一冊も戦後80年の続きである『ブラック・スノウ』。1945年3月10日の東京大空襲は、B29による低空夜間の焼夷弾攻撃で10万人以上が死亡し、27万戸が焼失した。本書ではこの作戦を米日双方の視点から展開している。米軍は当初、倫理を重視した高高度爆撃に失敗し、米陸軍航空軍の指揮官カーティス・ルメイの強い信念によって無差別空襲へ方針を転換する。日本侵攻での米兵大量犠牲を避ける判断の裏で、甚大な民間被害が生まれた現実を通し、戦争の惨禍と記憶継承の重要性を訴える。

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【MB2026-029】運慶講義(山本勉)

 平安末から鎌倉初期にかけて活躍した仏師・運慶は、仏がそこに在るかのような写実性で人々を魅了してきた。研究の第一人者・山本勉の『運慶講義』。円成寺大日如来像から南都復興、興福寺北円堂に至るまで運慶の生涯と制作を講義形式でたどる。読み進めることで、運慶が平安密教像や飛鳥・奈良の古典、さらには唐・宋の様式まで学び、歴史の流れの中で独自の表現を築いたことが明らかになる。父・康慶の影響や時代背景も含め、歴史と結びついた運慶像を深く理解できる一冊だ。今後は運慶をも意識して寺院を訪れたい。

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【MB2026-028】仕事の質を高める休養力(角谷リョウ)

 『仕事の質を高める休養力』。休養には単に疲労を出すだけでなく、完全に休み、心身を充電する段階が必要だと述べられている。まず「疲労を出す」ために、休む前の片づけで環境を整えることが重要で、音楽に合わせ即断で仕分ける鬼速片づけが効果的とされていた。次に「完全に休む」段階では、デジタル機器から離れるデジタルファスティングにより脳疲労をリセットする重要性が強調されている。さらに週末リセット術として、午前中の掃除や片づけ、夜の温冷浴など具体的な回復スケジュールが示され、実践的な一冊だ。

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【MB2026-027】自衛隊に告ぐ(香田洋二)

 元自衛艦隊司令官という経歴を持つ著者による『自衛隊に告ぐ』。本書では36年間奉職した自衛隊の内部に切り込み、軍事組織としての機能不全を公的に問題提起する。そして、自衛隊自身の組織文化や人事慣行に焦点を当て、海自の旧海軍的体質、陸自の地域重視思想、空自の任務偏重を具体的に指摘する。その背景に米軍依存の安全保障構造がある可能性を示しつつ、米国の関与が不透明化する現在、著者の警鐘は一層重い意味を持つのではないだろうか。衆議院選挙後の政権による防衛に対する政策が気になった一冊である。

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【MB2026-026】人生、山あり“時々”谷あり(田部井淳子)

 田部井淳子の『人生、山あり“時々”谷あり』。「山登りには、計画を立てる楽しみ、実際に登る楽しみ、下山後に検証するという3つの楽しみがあり、しかも道具さえ揃えれば安い交通費だけで一日中満喫できるため、学生にとって魅力的であった。登山中には地元の人々との温かな交流や人の親切に触れる喜びがあった。登山を通して生活に張りが生まれ、学業や読書への意欲が高まり、自信を得ることができた。山は、東京で劣等感を抱いていた自分を癒し、成長させてくれた存在であった」と訴える。やはり山は最高である。

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【MB2026-025】学校では教えてくれないシェイクスピア(北村紗衣)

 シェイクスピア研究者が男子高校生に行った集中講義の記録である『学校では教えてくれないシェイクスピア』。著者と学生の対話形式の軽やかさが魅力の一冊。名作を「拝む」のでなく、違和感や疑問を起点に批評的に読む楽しさを伝える。英詩のリズムや演劇史など本格的知識も平易に解説しつつ、『ロミオとジュリエット』を自由に演出する課題など実践も刺激的だ。ジェンダーや人種問題にも向き合い、本の後半では翻案映画を通して批評の意義を考える。名作とは、多角的に読み直しても摩耗しない作品だと教えてくれる。

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