【MB2025-236】ブラック郵便局(宮崎拓朗)

 大学時代の年末年始に年賀状配達で仙台市内をカブで走り回った郵便局でのバイト。そんな郵便局での知られざる闇を暴いた『ブラック郵便局』。民営化前後の郵便局では、ノルマ達成のため局員が自腹で商品を買う「自爆営業」が横行していた。著者はその取材を端緒に、不正や腐敗、政治との癒着が続く郵政グループの暗部を追う。全サービスに及ぶノルマ至上主義、パワハラや高齢者への不適切な勧誘、内部通報の形骸化までを描き、社会インフラとしての郵便局の在り方を厳しく問う。これでもまだ氷山の一角なのであろう。

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【MB2025-235】はじめての圏論(加藤文元)

 圏論は1940年代、アイレンベルグとマックレーンにより、急速に発展する数学諸分野の類似性や関係性を捉えるため、代数トポロジーホモロジーを記述する道具として生まれた。分野横断的な視点で構造そのものを扱う点が特徴で、戦後数学の統一的基礎を求める動きがあった。高い抽象性と普遍性を持ち、現在では数学を超えて数理科学の共通言語として用いられている。一方で難解さから初学者には距離がある分野でもある。『はじめての圏論』は、本質をやさしく解説する入門書であるが、それでも自分には難しかった。

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【MB2025-234】「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる(勝木健太)

 自分らしい強みを見つけるには、まず徹底した自己分析が重要。仕事内容や人間関係などで「何が嫌か」「何が心地よいか」を明確にし、他人の評価ではなく自分の価値観を基準に再設定する。次に、競争的な評価軸から一度離れ、自分の「好き」「得意」「情熱」に目を向け、没頭できる時間を通じて唯一無二性を発見する。さらに、会社依存を安定と捉えず、主体的に選択できる状態を目指す。未経験への挑戦や他者に頼る勇気を持ち、得意分野に集中することで、ブレない軸と自分だけの強みが育つ。「唯一無二性」が大事だ。

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【MB2025-233】無数の言語、無数の世界(グレイブ・エヴェレット)

 我々は普段、自分の言葉が世界の見方をどれほど規定しているかを意識しないが、母語以外の言語を学ぶことでその固有性が見えてくる。『無数の言語、無数の世界』では、大学や研究で扱われてきた言語が世界のごく一部に過ぎず、言語の多様性が過小評価されてきた点を指摘する。近年はコンピュータの発展により、多様な言語を広範に分析できるようになり、欧米中心の偏見から言語理論は解放されつつある。言語の多様性は生き方や環境の多様性の反映であり、日本語もまた独自の価値と可能性を持つことが実感させられる。

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【MB2025-232】全員タナカヒロカズ(田中宏和)

 名前への不思議な親近感から、田中宏和さんは約30年前に同姓同名を探す活動を開始した。ネット未普及の中で仲間を増やし、歌やバスツアー、本の出版、全国ツアーへと発展。14人の同名著者が並ぶ広告など話題を呼び、ついには多数の田中宏和が集結しギネス認定を受けた。しかし、すぐにセルビアのミリツァ・ヨヴァノビッチさんに同姓同名の世界記録を抜かれてしまうオチが何とも愉快である。「未来や行動が予想される時代にあって、偶然性を積極的に取り組む事は、人生の楽しい遊びとなる」とは素敵な言葉である。

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【MB2025-231】サッチャー(池本大輔)

 高市首相誕生でにわかに注目を浴びたサッチャー。ちょうど今年がサッチャー生誕100年と日本初の女性首相誕生の時代背景のもと刊行された本格評伝で、彼女の実像を多角的に描く。英国初の女性首相でありながらフェミニズムには否定的で、自己責任論を徹底し女性登用も進めなかった点を指摘する。新自由主義を非妥協的に推進した「鉄の女」の政策は失業や社会分断を招き、成功神話には慎重な検討が必要だとする。脱産業化や格差拡大への批判的視点も示し、最新研究と史料で毀誉褒貶の人物像に迫る労作な一冊である。

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【MB2025-230】ドイツ戦後史1945-1955(ハラルト・イェーナー)

 『ドイツ戦後史1945-1955』。敗戦と占領下の民主化を経験した戦後ドイツ社会を、人びとの心性と日常から重層的に描く。廃墟での生活、闇市や大移動、文化や性の変容、男女の齟齬や占領軍との関係などを資料豊かに再現。混乱の中での連帯と崩壊の併存、自己被害者化と非ナチ化という矛盾を捉え、占領と再教育が民主主義成立の前提となった過程を西独・東独の差異も含めて示している。社会の崩壊と連帯が「一つの呼吸の中に存在していた」ことを強調する。日本の終戦直後についても同様の著作物を期待したい。

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