【MB2024-072】目的への抵抗(國分功一郎)

 同じ年に産まれた國分功一郎氏の『目的への抵抗』。哲学に関する本は難しいものが多いが、多少はわかりやすかった印象である(脱線するが、國分でも、モンテディオの我が推しは「こくぶ」、このタメの哲学者は「こくぶん」と読む)。初めて名前を聞いた現代の哲学者・アガンベン。コロナ禍で発表した論考の三つの論点、「生存のみに価値を置く社会」、「死者の権利」、「移動の自由の制限」。いずれもコロナ禍を理由に強いるものではないと主張。哲学者は「チクリと刺す蛇の役割を演じる
」という著者の比喩は頷ける。

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【MB2024-071】一億三千万人のための「歎異抄」(高橋源一郎)

 藤井さん。将棋界の藤井聡太さんではない。法然親鸞の罪人名は藤井善信と藤井元彦。なぜ藤井姓なのかは謎である。そんな元彦さん(親鸞)の教えを唯円が書き残した「歎異抄」をわかりやすく解説した高橋源一郎さんの『一億三千万人のための「歎異抄」』。「南無阿弥陀仏…」と唱えるだけで何人も浄土に往生できるという安易さに個人的に疑問を抱いていたところ、著者は「ことばとこころの関係ではいつでもことばが先行する」と述べ、納得。確かに思いもしないことが口に出たりする。ことばが先行、まずは唱えよう!

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【MB2024-070】M-1はじめました。(谷良一)

 今では国民的認知度が高いM-1。低迷していた漫才を盛り上げるために立ち上がった元吉本プロデューサーの谷良一氏が記した初回を立ち上げるまでの回顧録である『M-1はじめました。』。今となっては懐かしい島田紳助。その彼の理解や協力なくして成し得なかったことやオートバックスに協賛してもらうまでの苦難等が赤裸々に綴られている。初代王者の「中川家」が当初は参加に難色を示していたという事実も面白い。審査員に松本人志を据えた先見の明も素晴らしいが、今後はどうなるのか?余計な心配が頭をよぎる。

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【MB2024-069】達観するヒント(名取芳彦)

 『達観するヒント』。図書館の新着コーナーに陳列されていたものを借りて読んだ。もっと「気楽にかまえる」92のコツが書かれており、どれも参考になるものであった。そのうち7つほどメモしたが、その中の1つを抜粋して紹介すると、
【相手が変わらないなら自分を変えてしまえばいい】
自分の努力で相手は変わらないと納得したら、「なるようになる」「仕方がない」「次の機会を待とう」と、自分の考えを変えればいい。この方法で楽になれることは意外と多い。
 こういう図書館での良書との偶然の出会いに感謝である。

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【MB2024-068】イクジット(相場英雄)

 日経ビジネスで連載された際には途中まで読んだ『イクジット』。仙台の地方銀行に勤務していた同級生が追い詰められ自死したことを受け、その裏に潜む社会課題の取材を開始した雑誌記者の主人公。ネタバレで詳細は控えるが、アベノミクスを推し進める中で、リフレ派、反リフレ派の日銀内での内部対立がリアルに展開される。暗躍するフィクサーと対峙する主人公の行く末が興味をそそったが、やはり政治の力は絶大であると痛感せざるを得ない。我が国のイクジット(出口)はどうなるのか?今後の植田日銀に期待である。

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【MB2024-067】商店街の復権(広井良典)

 シャッター商店街。特に地方都市を訪れるとよく目にする光景である。そうした商店街や中心市街地の持つ新たな意味や価値に注目して、これからの時代における商店街や中心市街地の在り方や再生に向けたステップを提案しているのが『商店街の復権』である。自分が訪問したことのあるドイツの街などは人口数万人規模の街でも市街地が賑わっている。人々がゆったりとした時間を過ごせるコミュニティー空間としての「ウォーカブル・シティー(=歩いて楽しめる街)」をどのように目指すべきか、考えさせられる一冊である。

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【MB2024-066】科学をうたう(松村由利子)

 最近少しずつ興味が湧いてきた短歌。短歌を科学という視点で詠ったものを集めた『科学をうたう』。数多くの短歌を丁寧に解説しており、それを読むことでさらに勉強になる。科学と文学とは相容れないものだと思い込んでいる人も少なくない中、科学を題材にした数々の短歌を紹介することで、科学と短歌に共通するセンス・オブ・ワンダー、短歌と言う定型詩の奥深さ、そして私たちが生きている世界の様相を伝えたい、と著者は力説する。気になった一首、「マスクしてコロナウィルスに抗へば不要不急のものらかがやく」。

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