【MB2024-016】楽園の犬(岩井圭也)

 馴染みのある苗字の作家というだけで応援している岩井圭也氏。前回の「完全なる白銀」は自分の好きなジャンルである山岳小説ということで読んだが、今回はどんな小説なのか。題は「楽園の犬」。ハチ公か、などと想像を膨らましてみたが、いい意味で裏切られた。楽園とはサイパンのこと。昭和15年からの話なので、どんなストーリーなのかは想像に難くない。権力の手先に喩えた犬。この時期の南洋社会ならではの対立軸が複雑にからみ合い、主人公の任務が産み出す人間関係と相まってリアリティを物語に与えてくれる。

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